精神障害者は就職できないって本当?就職する方法を解説
- 精神障害は就職できない
- 精神障害は仕事ない
- 精神障害は身体に比べて就職不利
こんな噂を聞いたことはないでしょうか。
僕もこの噂をtwitterやネット上で何度も目にしてきました。
その度に「精神障害になった僕は人生おしまいだ」と思い落ち込んでいました。
でも、実際のところはどうなんでしょうか?
今回は「精神障害の就職」の現状を調べてみました。
記事内容は以下の通りです。
- 精神障害者の就職できないって本当?
- 精神障害者が就職するために考えること
- 精神障害者が就職までのロードマップ
結論から言うと、精神障害者でも就職できます!
本記事を読むことで、精神障害者の就職の現状と、就職する方法が分かります。
本記事を書いている僕は双極性障害を患っています。
精神障害者の目線で解説します。
厚生労働省のデータも交えながら、分かりやすく解説していきますので、ぜひご覧ください。
精神障害者は就職できないって本当?
ではさっそく、本題に入ります。
精神障害者は就職できないのか?
結論から言いますと、
「精神障害者の就職は難しかったが、改善傾向にある」です。
厚生労働省が発表しているデータを用いながら、詳しく解説していきます。
精神障害者の雇用の現状
精神障害者の雇用に関する3つのデータを紹介します。
- 働いている精神障害者は、精神障害者全体の約2.2%
- 働いている精神障害者は、障害者全体の約15%
- 精神障害者の雇用者数は増加傾向
詳しく見ていきましょう。
① 働いている精神障害者は、精神障害者全体の約2.2%
精神障害者全体は392.4万人に対し、民間企業で働いている精神障害者は88,016人。
その割合は約2.2%です。
参考までに、身体障害者の割合は約8.2%、知的障害者の割合は約13.0%です。
精神障害者は他の障害に比べても、働いている割合が低いことが分かります。
② 働いている精神障害者は、 障害者全体の約15%
上の円グラフは障害者の内訳になります。
身体障害者が一番多く、次いで精神障害者、知的障害者という順になっています。
それに対し下のグラフは、民間企業で雇用されている障害者の内訳になります。
もし、障害に関係なく同じ割合で働いていると仮定すると、下のグラフも上のグラフと同じような内訳になるはずです。
しかし、下のグラフを見てみると実際はそうなっていません。
身体と知的障害者で約83%を占め、精神障害で働いている人は、他の障害に比べて低いことが分かります。
③ 精神障害の雇用者数は増加傾向
ただし、悪い情報ばかりではありません。
精神障害者の雇用者数に着目しましょう。
次のグラフを見てください。
上のグラフは、精神障害者の民間企業での雇用者数の推移です。
グラフを見て分かる通り、年を追うごとに右肩上がりに増加していることが分かります。
これは平成30年に障害者雇用促進法が改正されたことも大きく寄与しています。
ざっくり説明しますと「民間企業は、障害者を一定数以上雇用しなければいけない」というルールがあります。
これまでは、このルールの対象障害者に精神障害は含まれていませんでした。
それが平成30年の改正により、精神障害者も対象になり民間企業に雇用されやすくなりました。
- 精神障害者の中で、民間企業で働いている人は約2.2%。
- 民間企業で雇用さている精神障害者は、他の障害に比べて低い。
- 民間企業で雇用されている精神障害者数は増加傾向
なぜ精神障害者は就職が難しい?
上述のように、精神障害で働いている人は、増加傾向にあります。
とは言っても、まだまだ精神障害で働いている人が少ないのは事実です。
なぜ精神障害者の就職は難しいのか?
それは企業側の目線で考えると分かりやすいです。
企業の人事部になったつもりで考えてみてください。
採用にあたって、下記のようなことを考えます。
- 精神障害は辞めてしまう可能性が高い
- 今まで法定雇用率の対象でなかったため、精神障害を雇った実績がない
- 精神障害者保健福祉手帳は期限がある
- 精神障害は障害が目に見えないため、配慮の仕方が分からない
① 精神障害は辞めてしまう可能性が高い
精神障害者は、他の障害に比べて辞める可能性が高いです。
下記グラフを見てください。
精神障害者の職場定着率は、他の障害に比べて低いことが分かります。
就職した精神障害者のうち、50%は1年以内に辞めています。
企業側からすると、一番避けたいのは、採用したのに辞められてしまうことです。
そういった観点から、精神障害者の採用を避ける傾向にあります。
② 今まで法定雇用率の対象でなかったため、精神障害を雇った実績がない
上述しましたが、平成30年の障害者雇用促進法の改正前は、精神障害は障害者を雇っている人数にカウントされませんでした。
極端に言うと、企業にとって精神障害者を雇うメリットは少なく、「精神障害は雇わない」という暗黙のルールのある企業が多かったです。
その名残もあり、これまで採用した実績のない企業では、依然として精神障害を雇わない傾向にあります。
③ 精神障害者保健福祉手帳は期限がある
精神障害者保健福祉手帳(精神の障害者手帳)は、2年おきに更新があります。
更新のたびに医師から診断書を入手する必要があります。
その際に、医師が手帳を持つレベルの精神障害ではないと判断すると、更新を行うことができません。
つまり、精神障害の場合、採用して数年後に障害者手帳を失う(=障害者とカウントされなくなる)可能性があります。
せっかく障害者として雇ったのに、時間が経つと障害者とカウントされなくなることがある。
これも精神障害者を採用しづらい原因になっているでしょう。
④ 精神障害は障害が目に見えないため、配慮の仕方が分からない
身体や知的障害は、精神障害に比べると「働く上でどんな配慮をしたらいいか」が明確です。
例えば、脚に障害がある身体障害者の場合、「立ち作業はできないけど、椅子に座ってのデスクワークであれば問題ない」というように配慮することが明確です。
一方、精神障害者は、出来る業務と出来ない業務の境界があいまいであったり、
その日の気分や体調によっても出来る業務が変わったりと配慮することが大変難しいです。
職場としても、障害が目に見えないため、どのように配慮したらいいか分からないのです。
- 辞める可能性が高い
- 雇用実績がない
- 障害者手帳に期限がある
- 障害が目に見えず、配慮が難しい
精神障害が就職するために考えること
ここまで精神障害の就職に関する現状をお伝えしました。
ここからは精神障害者が就職するために考えることを解説していきます。
「一般枠 クローズ」と「障害者枠 オープン」
障害者の就職には、「クローズ/オープン就労」「一般枠/障害者枠」があることはご存じでしょうか。
- クローズ就労…企業に自分の障害を開示せず入社すること
- オープン就労…企業に自分の障害を開示して入社すること
- 一般枠…健常者が応募する採用枠(障害者も応募可)
- 障害者枠…企業が障害者雇用するために設けた採用枠
注意)障害者枠は、障害者手帳を持っていないと応募できません。
そして、企業への就職方法は次の3パターンあります。
- 一般枠 クローズ
- 一般枠 オープン
- 障害者枠 オープン
注意)障害者枠は、障害を開示することが前提のため、クローズはありません。
今回は、分かりやすくするために「一般枠 クローズ」と「障害者枠 オープン」に絞って解説します。
まずは「一般枠 クローズ」と「障害者枠 オープン」のメリット・デメリットを見ていきましょう。
「一般枠 クローズ」のメリット・デメリット
「一般枠 クローズ」のメリット・デメリットを箇条書きしました。
○:メリット ×:デメリット
- ○求人数が多い
- ○職種の幅が広い
- ○給料が高い傾向にある
- ○いろいろな仕事を選べる
- ×周りの人と同等の成果を求められる
- ×残業や休日出勤が多い場合もある
- ×障害に対して配慮を受けられない
- ×障害を開示しないため、心理的負担が大きい
- ×職場定着率が低い
一般枠クローズの魅力としては、健常者と同じように選択の幅が広く、給料が高いことが挙げられるでしょう。
しかし、障害を開示しないことに起因した弊害も多く、それが職場定着率の低さ(長く働けない)に繋がっています。
「障害者枠 オープン」のメリット・デメリット
次に「障害者枠 オープン」のメリット・デメリットです。
○:メリット ×:デメリット
- ○障害に対して配慮を受けられる
- ○障害を開示するため、心理的負担が少ない
- ○就労移行支援など就職支援を受けられる
- ○自分の障害にあった仕事を選びやすい
- ○職場定着率が高い
- ×求人数が少ない
- ×職種の幅が狭い
- ×給料が低い傾向にある
- ×任せられる仕事が限られる
- ×昇給しづらい
- ×周りの人から障害者として見られる
障害者枠オープンの魅力は、障害に対して配慮を受けられるため、職場定着率が高い(継続して働ける)ことでしょう。
ただし、一般枠と比べると、選択の幅が狭く、給料が低いことがデメリットです。
どちらを選ぶか
ここまで一般枠クローズと障害者枠オープンの違いを見てきました。
見てわかる通り、どちらも一長一短であることが分かります。
ではどちらがいいのでしょうか。
筆者の考えは
「病気の症状を安定させる・長く働くために、障害者枠オープンがおすすめ。」
「病気の症状が安定している・長く働く自信がある場合は、一般枠クローズに応募するのは有り。ただし、おすすめはしない。」
です。
下の2つのグラフを見てください。
一年後の職場定着率(継続して働いている人の割合)は、障害者枠オープンが64.2%であるのに対し、一般枠クローズは27.7%です。
一般枠クローズは、障害者枠オープンの半分以下になっており、3人に2人は辞めている計算になります。
離職の原因の一つには、病気の症状の悪化(再発)が挙げられているため、一般枠クローズに応募するにあたり、体調が安定していることは最低条件と言えます。
特に、今まで一般枠で働いていて気分障害になったという人は、以前と同じ待遇を求めて一般枠に応募しがちです。
しかし、一般枠クローズで病気の症状が悪化(再発)し、働けなくなるのは本末転倒です。
病気の症状を安定させる・長く働くために、障害者枠オープンで働くことをおすすめします。
- 病気の症状を安定させる・長く働くために、障害者枠オープンがおすすめ
- 病気の症状が安定している・長く働く自信がある人は、一般枠クローズに応募するのも有り
精神障害者の就職までのロードマップ
最後に、障害者は就職までどんな経路で行くべきかを考えます。
今回は「障害者枠 オープン」と「一般枠 クローズ」を目指す場合で分けました。
ぜひ参考にしてください。
「障害者枠 オープン」を目指す
障害者枠オープンを目指すにあたっても、病気の症状がある程度安定していることは大事です。
「障害に対して配慮してもらえば、仕事を継続できるレベル」まで回復している必要があります。
とは言っても、本当に仕事を続けられるか不安だという人が多いと思います。
そこで、仕事に対する不安を減らすためにも就労移行支援を利用することをおすすめします。
就労移行支援のおすすめポイントとしては
- 就労移行支援に毎日通所できたという実績ができる。また自信がつく
- 就労移行支援のプログラムを通して、障害の理解・対処法を学べる
- 就職活動の際に、担当者がサポートしてくれるため安心
などが挙げられます。
特に就労移行支援に毎日通所できたという実績は、就職活動に役立ちます。
なぜかというと、精神障害の採用で、企業が一番考えるのは継続して働けるかだからです。
毎日通所できたと言えれば、企業側は安心して採用することができます。
就労移行支援で仕事に対する不安を無くしてから、障害者枠にチャレンジすることをおすすめします。
就労移行支援のおすすめは下記にまとめています。
また、就労移行支援を利用した後の就職活動は、下記を参考にしてください。
「一般枠 クローズ」を目指す
次に、一般枠クローズを目指す方法を紹介します。
筆者は、一般枠クローズを目指すになら、段階的にステップアップすることをおすすめします。
Step1:障害者枠クローズで就職する
Step2:病気の症状を安定させながら、継続して働けることを確認する
Step3:一般枠クローズに転職する
上述のように、一般枠クローズで就職した人の多くは1年以内に辞めています。
それを防ぐために、障害者枠で継続して働けることを確認してから、一般枠クローズに転職するというのはいかがでしょうか。
例え、病気の症状が安定しているのだとしても、それと継続して働けるかは別問題です。
多くの人は一般枠クローズにいきなりトライして、やっぱりダメだったとなっていますが、これは二度手間です。
石橋を叩きながらステップアップを目指しましょう。
障害者向け求人サイトは下記にまとめています。参考にしてください。
- 【障害者枠オープンを目指す】就労移行支援を利用し不安をなくしてから、障害者枠にチャレンジする。
- 【一般枠クローズを目指す】段階的にステップアップする。障害者枠オープンで働く→継続して働けることを確認→一般枠クローズに転職する
まとめ:精神障害者も就職できる!一歩一歩前進しよう!
ここまで「精神障害者は就職できる?」から始まり、「精神障害者の就職方法」まで解説してきました。
一つ注意点なのですが、筆者は就職することが全てだとは思っていません。
障害者の中には、パートやアルバイト、就労継続支援A型で働き障害年金を受給しながら生活している人もいます。また、生活保護を利用している人もいます。
筆者も就職できなければ人生終わりだと思っていた時期もありました。
しかし、障害者が生きていく方法は、たくさんあります。そのことは覚えておいてください。
就職を目指しているあなたが、無事に就職できることを祈っています!